
エスキモーにむし歯は存在しなかった!?
1868年といえば、日本では江戸時代で、井伊大老が桜田門外の変で亡くなった8年後にあたります。
この年にアメリカは、ロシアからアラスカを買い取りました。
虫歯の話は、アラスカの原住民であるエスキモーの人々に起こった歯にまつわる事件から話します。当時のアラスカはロシアの首都ペテルブルグから遠く離れ、ヨーロッパ文化から取り残された偏境の地でした。当地には砂糖のような甘味料はなく、住民は
アザラシやトナカイの生肉を主食としていました。しかし、この食生活が虫歯の発生を防ぐには極めて好都合で、エスキモーの人々にはむし歯は皆無に等しいものでした。
それがアメリカに属するようになると、欧米文化が一挙に流入してきました。当然、砂糖をはじめとして、チョコレートに代表されるような菓子類もその中に含まれていました。そこで起こったことは、住民に虫歯
が発生したことでした。
おやつと歯みがきの関係
虫歯と砂糖の関係について、戦後の日本で調査研究されたことがありました。それによると、砂糖の消費量と虫歯の発生数は正比例の関係にあることが明らかになりました。
したがって、甘いものを良く食べるお子さんには、虫歯が多いと一般的にはいえます。そこで、甘いものは虫歯に悪いからといって、子供にお菓子を一切食べさせないのはかわいそうです。子供はお菓子が大好きですし、これを与えることは情緒発達の上からも大切なことです。
近ごろの若いお母さん方が、虫歯への関心が高くなったためでしょうか、園児や学童の虫歯は激減しました。そこには、食事やおやつを食べたらすぐ歯を磨く、という習慣が身についてきたためと思われます。このことは好ましいことですが、食べたらすぐ歯磨きをするということは、あまりにも神経質すぎるように思います。また、このことで虫歯は完全に防げるのでしょうか。
歯ブラシによる歯垢除去効果は、磨き方にもよりますが、どんなに丁寧に磨いても完全ではありません。必ず磨き残しの部分が存在します。磨き残しの甘いお菓子が、一晩中歯に付いていたらどうなるでしょう。
ヒトの口では、昼間の起きているときには常に唾液が出ています。唾液の中には虫歯菌の増殖を抑える抑制物質や、虫歯菌で発生した酸を中和する物質などが含まれています。したがって、日中に甘いものを食べても虫歯はほとんど発生しません。だからといって、四六時中お菓子を食べたり甘いジュースを飲んでいては、虫歯になることはいうまでもありません。
むし歯にならないコツ
虫歯にならないためには、どんなことに注意すればよいのでしょうか。
まず、子供へのおやつは、10時と3時というように、必ず時間を決めて一定量を与えるようにします。
さらにもう1つ大切なことは、寝る前の2時間以内は、何も食べないことです。できれば夕食後は、何も食べないことです。もし、
夜に何か食べたら2時間以上は起きているようにします。そして、歯ブラシをしっかり行って就寝する習慣をつけます。これで虫歯はほとんど防げるはずです。
虫歯は夜つくられるのです。