部分入れ歯は難しい!?

 歯科医師が、治療上で最も難しいのは部分入れ歯です。と言うと「へー?」と言われるかもしれません。それより総入れ歯の方が難しいように思われるでしょうが、実はそうではないのです。ここで部分入れ歯の難しさを知ることは、部分入れ歯を長持ちさせる知識につながりますのでお話しします。

部分入れ歯の難しさ その1

 部分入れ歯といっても、1本しか歯が残っていない場合から、1本の歯しか失っていない場合、さらに上顎と下顎がありますので、その種類は無数になります。でも歯科医師は、その種類はほとんど気になりません。なにが難しいかというと、部分入れ歯の咬み合わせは、自分の歯同士が咬み合う位置、人工歯と歯が咬み合う位置、人工歯と人工歯が咬み合う位置が混在していることです。自分の歯は、垂直に力が加わると0.05〜0.2mmほど骨の中に沈みます。一方、入れ歯の人工歯は、粘膜の上に載っているので0.2〜2mmも沈みます。難しさはこの沈下の度合いが、歯の位置によってまちまちであるということです。

 咀嚼とはパンのようなものを噛み潰すことだけでなく、魚の小骨のような小さくて硬い食品も噛み潰さなければなりません。
 そこで小骨を噛み砕くことを考えてみます。本来の自分の歯では、どの歯で噛んでも小骨に同じ咬合力が加わります。ところが入れ歯では、小骨を噛み潰そうとすると沈下の度合いが大きいため、噛み潰すことのできない場合があるのです。
 自分の歯同士でかみ合っている位置が、最も強い力を加えることができるため、この位置で噛むのが最も噛みやすいのです。すると、この歯は常に仕事をさせられることから、過重労働を強いられることになります。さらに悪いことに、入れ歯に加わる力は粘膜下の骨で支えています。この骨は、月日の経過と共に痩せてくるのです。すると、入れ歯と粘膜面との間に隙間ができ、入れ歯はより大きく沈み込むことになります。そうなると、ますます自分の歯が加重負担に陥り、やがて歯は動揺をきたし抜歯に至るようになるのです。

部分入れ歯の難しさ その2

 部分入れ歯では、入れ歯が落ちないように残っている歯にバネをかけます。
 曲者はこのバネにあります。入れ歯は骨の上の粘膜に乗っています。この状態は、いわば馬の鞍にまたがっているようなものです。咀嚼で人工歯に力が加わるたびに、入れ歯は前後左右に揺れます。入れ歯の揺れは、今度はバネを介して歯をゆすることになります。噛む力は30kgもあるので、義歯をゆする力も大きなものとなります。バネのかかっている歯は入れ歯に接した位置にあり、咀嚼の主役となっている歯なのです。この歯は、自身に加わる力に加えて、入れ歯の揺れを防ぐ働きもさせられています。したがってバネのかかっている歯が、最も過酷な労働を強いられるのです。その結果、歯がぐらぐらしてきて、気がつくと抜歯ということになるのです。

部分入れ歯の寿命をのばすコツ

 ではどうすれば、部分入れ歯で残っている歯を失わないようにできるのでしょうか。
 部分入れ歯で最大の問題は、入れ歯の下の骨の変化です。その変化は、月日の経過でどうしても痩せてくるのです。さらに入れ歯からの力が骨に加わると、骨の痩せはより早くなるのです。
 したがって、部分入れ歯を長持ちさせるには、定期的に診査をして骨が痩せて、入れ歯との間に隙間ができたら、その隙間を補ってやることが絶対に必要なのです。それを義歯の裏打ちといいます。 
 隙間の点検の間隔はどのくらいかというと、患者さんによって異なりますが、一般的には半年ごとです。でも多くの患者さんは、その時期をはるかに超えて、バネのかかっている歯がグラグラして取り返しのつかない状態になってから、歯科医院を訪れることが多いのです。そうなっては治療の手立てがありません。
 このような経過をたどりながら、徐々に歯を失い総入れ歯に移行するのです。部分入れ歯を使用している患者さんでは、こまめな点検と裏打ちの治療によって、入れ歯の寿命を延ばすことができるのです。

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